全国の神社とパワースポット
神崎稲荷大明神(神崎神社)
■概要
長崎市中心部に位置する町の玄関口・長崎湾を眼下に臨む「神崎稲荷大明神」は、総事業費846億円をかけて2005年(平成17年)に開通した「女神大橋(めがみおおはし)」の袂の近くに鎮座する金運のパワースポットで、「神崎神社」、「金貨稲荷」など、いくつもの呼び名があります。
創祀はいつの頃か定かではありませんが、長崎県文化振興課の公式サイトによれば神崎神社の歴史は古く、日本書記の時代にまでさかのぼります。
また、第4代「仲哀(ちゅうあい)天皇」の后で三韓征伐(さんかんせいばつ)を行ったことで知られる「神功皇后(じんぐうこうごう)」を御祭神に祀ったとの説や第二次世界大戦中には地元の方が家族の無事の生還を祈ったところ、念願が成就したとのエピソードもあります。
神域に再建事業の記念植樹があることから一度は廃れてしまったことも見て取れますが、高台から臨む長崎湾や香焼、伊王島や神の島、戸町、小ヶ倉の眺望は心洗われる見晴らしの良さで対岸の台場跡と同様にここが古くから海防の要衝として重用されていた遠い昔をしのばせます。
神崎神社は、長崎のまち歩き観光ツアー「長崎さるく」の第一弾企画「学さるく・パワースポット巡り」で取り上げられたほどの定番スポットで、女神大橋の開通によってその御神徳はますます広く知られるようになりました。ちなみに「さるく」とは、長崎弁で「ぶらっと歩く」という意味です。
参道が短く、一の鳥居が真っ直ぐ海に向かって立っていることから、かつては長崎湾から船で乗り付けて参拝する神社だったことが想像できますが、現在は神社正面に護岸壁とフェンスが建てられており、通行できなくなっています。
したがって参拝者は、ながさき女神大橋道路「木鉢料金所」付近に整備されたコンクリートの階段を使って裏から神域へと登り、境内の一番高いところから下に向かって下ることになります。最後に300段余りの石段を下ると、そこが本来の入り口になっています。
個人の方が管理改修しているとの噂もあり、手作り感あふれるちょっと不思議な神社ですが、途中には整備された参拝者用の駐車場があることに加え、大きくて分かりやすい案内板も各所に設置されています。
■女神大橋
長崎湾をまたいで長崎市南部と西部を繋ぐ女神大橋は、延長1,289メートル、海面からの高さは65メートルにもおよぶ3径間連続鋼斜張橋で、斜張橋としては国内6番目の規模を誇ります。
公募で決まったという「ヴィーナスウィング」の愛称のとおり、そびえ立つ鉄塔から斜めに伸びたケーブルが優美です。
橋の名前になっている「女神」とは、神崎神社の対岸にそびえる標高234メートルの大久保山のことで、その中腹にある「魚見岳台場跡」は国の史跡にも指定されています。
橋の通行料は普通車が100円、歩行者は無料です。歩道の途中に切り取られた小窓からは、65メートル下の景色を覗くことができます。
■民間信仰の聖地
神崎神社に社殿や楼門はありませんが、早くから交易で活況を呈した海運の町・長崎の玄関口を守る神さまとして篤い崇敬を集めていたようです。
各所に点在する素朴な石造りの祠の中には、金運のパワースポットとして人気のお稲荷さんをはじめ、たくさんの神々が集合しています。大迫力の至近距離に迫る女神大橋と、朱い鳥居のコントラストも鮮やかです。
まず最初に参拝者を迎えてくれるのは、藪にらみですべての悪を撃滅すると言われる大日如来の化身「不動明王(おふどうさん)」で、日本神話の猿田彦と同一視される「白髭(しらひげ)大明神」や、商売繁盛の神さまとして有名な「恵比須(えびす)神」、日本古来の民間信仰「白蛇さま」など、思い思いのスタイルで祀られています。
「稲荷大明神」は、蛇信仰に次いで古くから民間で信仰されている神さまで、古くは山と里を行き来して水稲や桑の葉などの農耕を守る「宇迦之御魂(うかのみたま)」を信仰するものでした。
やがて神仏習合で「荼枳尼天(だきにてん)」と同一視されるようになると、荼枳尼天の乗り物である狐を化身として崇める民間信仰が生まれ、商売繁盛と金運上昇の神さまとして今も根強い人気を誇ります。
数ある鳥居の中の中には、珍しいところで「船魂神」の額も見えます。詳細については不明ですが、神社の立地などから恐らく各地に鎮座する「船玉神社(ふなだまじんじゃ)」で祀られている船の守護神「おふまさま」のことと思われ、古くから船大工や漁師の信仰を集めていたことが想像できます。
おふなさま信仰は、特定の神さまと言うよりは先祖霊や守護霊といった「祖霊」に近く、その作法は御神体として女性の毛髪や2つのサイコロ、人形などを合わせて船に積み込み、航海の無事を祈るというミステリアスなものです。女性がひとりで船に入ることは禁じられており、不漁が続くときは御神体を入れ替えることもあったようです。
神崎神社の周辺には近代的な巨大つり橋が誕生し、造船所のドックや工場などが湾岸一帯を埋め尽くす中、風雨に晒されて佇む祠と石像だけが時代に取り残されるように存在するのかと思いきや、遠い昔から目の前を行き交う船の航海を見守ってきた神々のあたたかな眼差しが感じられるスポットです。
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