全国の神社とパワースポット
鵜戸神宮
■概要
宮崎県の南部に位置する日南(にちなん)市は、昭和40年代に新婚旅行の定番スポットとして賑わいを見せた宮崎の代表的な観光地です。
そんな日南市の「国定公園 日南海岸」に所在する『鵜戸神宮』は、日向灘に面した断崖の中腹に位置し、古くから「鵜戸さん」の愛称で親しまれてきました。
神仏習合の時代には、当時流行した修験道の道場として大いに賑わい、「鵜戸権現」とも称されましたが、1868年(明治元年)の神仏判然令を受け、翌年の明治2年には「鵜戸神社」と改称されました。現在の名称になったのは明治7年のことです。
鵜戸さんの最大の特徴は、高さ8.5メートル、広さ300坪ほどの洞窟の中に社殿が鎮座しているという点です。
参拝するためには、崖沿いの石段を降りる必要があることから「下り宮」と呼ばれますが、本殿が神門や楼門より低い位置にある神社は全国でもめずらしいと言われています。
創祀の年代は定かではありませんが、社伝によれば古来より航海の安全を祈る海洋信仰の聖地であり、第10代崇神天皇(すじてんのう)の時代に、6柱を祀る「六所権現」として創建されたとの記録が残っています。
■御祭神について
神社名の「うど」は、洞窟を意味する「洞(うろ)」から転じたものとされ、主祭神に日本書紀の『日子波瀲武鸕草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)』をお祀りすることから、「鸕」を意味する「鵜」の字が充てられたということです。
鵜戸神宮の主祭神は、山幸彦として知られる「彦火火出見尊(ひこほほでのみこと)」と、海神(わだつみ)の娘である「豊玉姫(とよたまひめ)」の間に誕生した神さまです。初代・神武天皇の父神にあたるとされ、古事記では「天津日高日子波限建鵜草葺不合命」の字が充てられています。
山幸彦のエピソードは、「浦島太郎」のモチーフとも言われる日本神話「海幸彦と山幸彦」に登場します。要約すれば、海神宮(竜宮)から帰還した山幸彦(浦島太郎)と、彼を追って陸に上がった豊玉姫(乙姫さま)の物語で、山幸彦が建てた浜辺の産殿で主祭神を出産した豊玉姫は、再び海へと還ってしまいました。
「日子波瀲武鸕草葺不合尊」という名前には、この地に産殿が建設された際、屋根が完成する前に神さまがお生まれになったことから「鵜の羽で屋根を葺き終わる前に生まれた」という生誕エピソードが盛り込まれています。
産屋に鵜の羽を使用するのは、古くより伝わる安産のおまじないですが、羽を葺き終わる前に出産を終えたことから、豊玉姫は九州や四国を中心に安産の神さまとして祀られています。鵜戸神宮も安産のパワースポットとして知られるようになりました。
■社殿について
豊玉姫の産殿の跡に建つと伝えられる社殿は、本殿・幣殿・拝殿が一体となった『八棟造(やつむねづくり)』という様式で、多くの棟を持つ複雑な構造が特徴です。こけら葺きの屋根や、鮮やかな朱塗りの外観も印象深く、あたかも海底に佇む竜宮城のような佇まいです。
建物はこれまでに幾度も改築され、直近では昭和43年と平成9年にも改修されていますが、今も往時の様式を継承していることから文化価値が認められており、県の有形文化財にも指定されています。
本殿には主祭神のほかに「天照大御神」「神武天皇」など5柱の大神さまが祀られており、『二拝・二拍手・一拝』が参拝の作法となっています。
■境内社
本殿周辺には3つの境内社があります。本殿の東側に鎮座するのは『皇子神社』で、初代「神武天皇」の長兄にあたる「彦五瀬命(ひこいつせのみこと)」をお祀りしています。他に、住吉神社・火産霊神社・福智神社の3社を合祀した社と、9柱が祀られた『九柱神社』があります。
■パワースポット(霊石亀石)
長い歴史のある鵜戸神宮の境内には、神さまが祀られた社殿のほかにもパワースポットが散在しています。
そのうちのひとつが本殿下の磯にある『霊石亀石』で、豊玉姫が出産のために海神宮(わたつみのみや)から陸に上がる際、亀の姿をした石に乗って来たとの言い伝えが残っています。
亀石の背中にひし形のくぼみがあり、男性なら左手で、女性なら右手で「運玉」と呼ばれる素焼きの球を投げ、くぼみに入れば願い事が叶うと言われています。
■パワースポット(お乳岩)
海神宮の住人だった豊玉姫は、「八尋和邇(やひろわに:巨大ザメ)」の姿になって出産しますが、正体を山幸彦に見られてしまったことを恥じ、生まれたばかりの我が子を妹の玉依姫に託して海神宮へと帰ってしまいました。
その際、豊玉姫が洞窟に両方の乳房を取って付けたと伝えられているのが『お乳岩』で、鵜戸神宮の御祭神は、この岩から滴る乳で作った飴を母乳代わりにして成長しました。鵜戸神宮では、今もお乳岩から滴る清水で作った「おちちあめ」を購入することができます。
■国の天然記念物
鵜戸神宮の境内を囲むように生い茂る鎮守の森は、いかにも南国宮崎らしい景観を生み出す亜熱帯性の自然林です。
シダの一種である鵜戸ヘゴの群落が自生する北限地帯で、昭和43年には国指定の天然記念物「ヘゴ自生北限地帯」に加えられました。その樹高は最大で4メートル、葉のサイズは2メートルにも達します。
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